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 ライト兄弟は初飛行に成功する二年前までは「人類が空を飛ぶようになるのは50年後だろう」と言っていたそうです。IBMが世界で初めてコンピューターの発明に成功した時、同社幹部は「このマシンの需要は、おそらく、世界で5台程度だろう」と考えていたとも聞きました。科学技術の進歩の速さとその影響力は、私たち、いや当事者の想像を超えるほどの勢いで急展開する、ということを示すエピソードです。

 たとえば、ここ数十年のインターネットの席捲ぶりを見れば、それはそうなんだろうと思います。私たちの暮らしの外堀は、日進月歩ならぬ分進時歩で次々に「新たなる技術」で埋め尽くされ続けています。前記の挿話は、「したがって、すべからく企業も人も、急速な技術革新の波を先取りし、遅れをとらぬようにしなければならぬ」といった文脈で語られるのですが、果たして、本当にそうなのか…。

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 奄美大島に出張した足を伸ばし、大島の南に位置する加計呂麻島に 行ってきました。十数年ぶりに訪ねた目的の一つは、作家の故・島尾敏雄さんが、かつてモーターボート特攻艇「震洋」の隊員として出撃命令を待った呑之浦(=写真)の「いま」を見たかったからです。昭和20年春、北上を続ける米軍を迎え撃つため、先端部に爆薬を充填した特攻艇で訓練を重ねた極限の体験が、その後の島尾文学の礎となります。死と隣り合わせの長い長い時間と、地元の少女ミホさんとの巡り逢い…その舞台となった海は、まるで内陸湖のように静まり返っていました。入江沿いに整備された遊歩道を歩きながら、かしこに茂る亜熱帯の森のあちこちから、かつて、この地で猛訓練を続けていた若き特攻隊員たちの軍靴の足音やざわめきが聞こえてくるような…そんな幻聴を聞いたような気がします。

 一つひとつのかけがえのない生命が、束の間燃焼し、やがて静かに消えて行った地に佇んでいると、戦後、私たちが追いかけていたものの、薄っぺらさ、虚しさが、異形のものとして迫ってくるのです。

 同種の人間たちが、限定された世界の中にひしめく狭い空間、当たり前と思っている価値感覚の中で、次から次に置き去りにしているものたち。それに、ふと気付くための旅も悪くありません。
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